Columnコラム

メディア記事 2019.11.18

第3回マーケティング基本の「き」OBカップルを“推奨者”に育てる「CRM」

Thanks Partyには退職したプランナーも呼ぼう 済客とプランナーの食事会は経費でサポート

OBカップルが 未来の顧客を連れてくる

集客難が深刻化する中、ブライダル企業は、「CRM」というマーケティング手法に注目すべきだと思います。
CRMはCustomerRelationshipManagementの略で、顧客関係管理と訳されます。端的に言えば、自社の商品・サービスとの接点を増やし、その都度、満足してもらうことで顧客ロイヤルティを高めていく、つまり、リピーターになってくれるような“ファン”を増やして売上の安定・拡大を図るという手法です。
これまで、結婚式は基本的に一生に一回の買い物でありリピーターにはつながらないため、CRMはブライダルビジネスには向いていないと考えられがちでした。しかし、新郎新婦本人はリピートしなくても、「私達が挙げた会場、すごく良かったよ」などと周りに推奨してくれ、未来の顧客を連れてきてくれるという循環は期待できます。信頼できる友人・知人に薦められて来館するカップルは、最初から自会場に対して良い印象を持っているため、成約率も上がりやすいです。このように、OBカップルを有力な推奨者にするためのCRMにブライダル企業は取り組む
べきだと思います。

CRMでは全ての顧客接点で 満足させることがポイント

では、OBカップルとどのように接点を増やしていけば推奨者になってもらえるのか、いくつかアイデアを紹介してみます。
最近は、「ThanksParty」などを開く会場が増えていますが、単に食事するだけでなく、結婚式を担当してくれたプランナーとのコミュニケーションを重視すべきだと思います。「担当プランナーに会いたい」という
のは、お客様がThanksPartyに参加する大きな理由の1つです。にもかかわらず、「退職してしまった」「人事異動で県外の会場に配属になった」など、どんな事情であれ、会えなければがっかりさせてしまうと思います。CRMにおいては、全ての顧客接点で満足して頂く事が重要なので、落胆させたり不快感を与えてしまうと逆効果になりかねません。
ThanksPartyは、ほとんどが予約制で、どのプランナーが担当したお客様が参加するのか、事前に把握できるため、退職者に連絡を取ったり、異動したプランナーも都合を付けてもらって、お客様が極力、担当プランナーに会えるような努力が必要だと思います。
中には、競合会場に転職した退職者もいるかもしれませんが、顧客満足を優先するなら、そこは寛容に考えるべきでしょう。
私は最近、結婚式を挙げた新郎新婦1000人にヒアリングする“1000人チャレンジ”に取り組んでいますが、満足度の高い結婚式を挙げた人は、「あのプランナーさんのお陰で良い結婚式ができた」と口を揃え、担当プランナーを友人や知人に紹介したいと言います。
ただし「あのチャペルで挙げられて幸せだった」など、会場のハードを勧めるのは「私たちは、すごいところで挙げた」という自慢に受け取られるのではないかと懸念しているようで、特に、担当プランナーに対する推奨モチベーションは高いと感じています。

 

新規接客も貴重な 顧客接点の1つ

結婚式後、「反省会」と称して担当プランナーを食事に誘ってくれるお客様も多いですが、その飲食代を経費として認める、レストラン運営している企業であれば、自店舗に無料招待するなど、企業側でサポートするのも1つだと思います。その場に、スピーチや余興を頼んだ友人、二次会の幹事なども呼んでもらえれば、婚礼見込み客との接点を持つチャンスにもなります。
また、ブライダル企業の“顧客”とは誰のことを指すのか。私は、新規接客も貴重な顧客接点の1つだと思っており、たとえ非成約になったとしても“顧客”として接するべきだと思います。
非成約になる理由は、「予算が合わない」「ハード面で妥協できない点があった」など様々ですが、「このプランナーに会えて良かった」と思わせるような接客ができていれば、本人は他会場に決めても周りに推奨してくれる可能性は十分です。
非成約者にも結婚記念日にレストランでの食事を案内したり、クリスマスディナーに招待したりすれば、推奨してもらえる可能性はより高まるでしょう。
もちろん、新規接客において成約することは最大の目標だと思いますが、ファンになって頂けるような強い信頼関係を築くというのも重要なタスクだと思います。

他部署と顧客情報を共有できる プラットフォームも必要

結婚記念日や誕生日、子供のお宮参りや七五三などで定期的に来館している、ロイヤルカスタマーとのコミュニケーションも注意や工夫が必要です。1回でも、“得意客”と認識していないような接し方をしてしまうと、落胆させてしまい、顧客離れにつながる恐れがあります。
これを防止する最大のポイントは、顧客データを細かく蓄積し、全スタッフで共有することです。蓄積するデータは、結婚式を挙げたバンケット、会場装飾、婚礼メニュー、結婚式のテーマやカラー、演出・進行など、情報量が多いほど、きめ細かなサービスにつながります。
例えば、結婚記念日のディナーを予約した顧客に対し、テーブルに結婚式のブーケと同じ花を飾っておくといった準備もできます。結婚式から年数が経てば、本人達もディテールなどを忘れがちですが、サービススタッフから「結婚式当日のブーケと同じ花を飾ってみました」などと説明すれば、一気に結婚式当時の記憶がよみがえり、感動して頂けるのではないでしょうか。
ただし、こうしたコミュニケーションを実現するには、サービススタッフやレストランとの共有を図るためのプラットフォームも必要です。昨今は、様々なメーカーから優れた顧客管理システムが出されていますが、もちろん一定のコストがかかります。しかし、ロイヤルカスタマーからの紹介で来館する顧客は、成約率も高いと見込まれるため、投資する価値はあると思います。
忘れてならないのは、CRMの効果を最大化するには、結婚式当日の満足度が高いことが大前提だということです。結婚式当日の満足度が低ければ、その後、どんなに接点を持とうとしてもつながり続けられないどころか、周囲にネガティブな発言を広めて、来館を阻んだりキャンセル率を高めるファクターになる恐れもあります。数ある会場の中から、せっかく見学候補に選んで頂いたのに、実は自会場のOBカップルからのマイナス発言で見学を取りやめているというケースもあるのではないでしょうか。それでは、広告コンテンツへの投資も水の泡になってしまうことを肝に銘じるべきだと思います。

ウエディングジャーナル October2017

WJ74号_第3回
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