Columnコラム

2020.01.31

第6回マーケティング基本の「き」結婚式を“売る場所”の多様化

フリープランナーやECサイトも競合会場で“買う理由”がなければ負ける

第6回結婚式を“売る場所”の多様化

1本480円のお茶をどこで売るか?

4Pのうち「Place(流通)」は、商品をどのような経路や手段で顧客に届けるかという戦略ですが、これまでブライダル企業はさほど意識してこなかった側面だと思います。

例えば、1本480円ペットボトルのお茶をどこで販売するか。自動販売機やコンビニ、スーパーマーケットなど、様々な選択肢がありますが、ブランディングを考慮して、高級スーパーマーケットのみで販売するといった選択をするのが「Place」です。
結婚式の場合、お客様が購入する場所は大半が会場だったため、様々な工夫をする必要性は低いと考えられてきました。しかし、最近はブライダル業界や社会情勢の変化により、これまでの“常識”を見直す必要性が高まっていると思います。結婚式の一般的な「Place」は、会場を契約する「新規接客」フェーズ、料理や衣装、写真、映像、ヘアメイクなどの付帯商品を決める「打合せ」フェーズという大きく2つに分けて考えられます。それぞれを取り巻く環境の変化、ブライダル企業に求められる経営努力について考えてみましょう。

まず、会場を契約する「新規接客」フェーズについて。注目したいのは、フリープランナーやクリエイティブ力の高さを武器にするプロデュース会社などの台頭です。従来、会場を契約する時に最も重視されるのは、その会場の雰囲気などハード面の魅力だったと思いますが、フリープランナーやプロデュース会社を選ぶ

お客様は、ハード面よりもプランニング力の方に重きを置いています。フリープランナーやプロデュース会社は、新規接客の時点から、新郎新婦のバックボーンに迫るようなヒアリングを行い、2人にぴったりのウェディングテーマやストーリーを提示した上で、ぴったりの会場やスペースを導き出しています。もちろん、フリープランナーやプロデュース会社が会場に送客して
くれるケースもありますが、見方を変えれば会場にとっては“競合”とも言えます。会場所属のプランナーが彼らと伍していくには、「この人に任せたい」と言ってもらえるような提案力や人間力が不可欠だと思います。

インターネットでは多くの中から好きな商品を選べる

次に、衣装や写真などの付帯商品を決める「打合せ」フェーズについて。持込みニーズの増加に悩まされている会場も増えていると思います。最大の要因は、新郎新婦がインターネットやSNSなどを駆使して多くの情報を得られるようになったことです。新郎新婦がごく限られた情報しか得られなかった時代は、会場側から提示されるアイテムの中から選ぶことに、疑問を持つこともなかったかもしれません。しかし、最近は、アマゾンでも「ウエディング準備ストア」というページができていたり、インスタグラムを見れば、卒花嫁が“お譲り”と称して、自分が使ったアイテムを販売していたり、フリマアプリでペーパーアイテムを購入できたりします。会場側が提示するアイテムも、インターネット上で出回っている低価格で選択肢の多い商品群と比較されていることを肝に銘じるべきです。お客様に会場側が提示する商品を選んでいただくには、プランナーがストーリー性のある提案をできるかどうかが重要な鍵を握っていると思います。最低限、「こういう理由でお客様にはこのアイテムをお勧めします」と言えるようなスキルが必要です。テーマウェディングを導入する会場も増えていますが、お客様が心底納得できるテーマを導き出すには、かなり高度なスキルが求められると思います。せっかくテーマを設定しても、お客様がピンと来ていなければプランニングの軸にすることはできません。個人的には、無理矢理テーマを用意するよりも、お客様のバックボーンや趣味嗜好、ニーズに合わせて、1つ1つのアイテムに意味づけして提案するだけでも、大きな意義があるのではないかと思います。もちろん、カタログなどを見せて「この中から選んでください」といった“手配係”では存在価値がありません。何のレコメンドもなく、示されたラインナップの中から選ばされるだけなら、インターネット上で比較検討するのと同じですし、選択肢が多いという点で見ればネットショッピングの方に軍配が上がってしまいます。お客様によっては「既存の契約先にはぴったりなものがない」というケースもあるでしょう。そういう場合は、新たなベンダーをリサーチして上司に契約先を増やす提案をするといったバイタリティも必要だと思います。

結婚式=高額という概念は崩れつつある

これまで、結婚式という商品は、“人”の介在が必要でネットショッピングでは購入されにくいと考えられていました。理由は、「生活必需品でない」「購入頻度が極端に低い」「カスタマーの商品に対する知識・理解が乏しい」「高額商品」という主に4つ。この4つの理由のうち「高額商品」という概念は崩れつつあるのかもしれません。300万円、400万円という結婚式の内訳を紐解くと、料理・衣装・会場装飾・写真・ヘアメイクなど細分化することができます。会場でまとめて購入するから高額になるのであって、ECサイトで、ドレス・スナップ撮影・ヘアメイクなど、それぞれバラ売りされていれば、さほど「高額」という印象を与えず、ネットショッピングに対する心理的ハードルも低くなると思います。ベンダーにとっては、会場に依存せずともダイレクトにお客様に訴求できるチャネルができるわけですが、同時に競争激化は必至です。お客様には、インターネット上で商品力・価格競争力などを容赦なく比較検討されるため、これまで以上の企業努力が求められます。カスタマーにとっては大きなメリットになるでしょう。
当然、会場側で取り扱う商品もインターネット上に出回っているアイテムと比較検討されるため、パートナー企業については、マージン料率など自社に有利な契約を結べるかどうかよりも、クオリティの高さが必須条件になると思います。

会場のハードやウェディングアイテムの商品力だけで勝負するのは、難しい時代になっています。新規接客・打合せ、いずれにせよ、ウェディングプランナーの企画力・アイデア力・ひらめき力がなければ、お客様が会場で買う理由は生まれないのではないでしょうか。

WJ77号_第6回
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