Columnコラム

メディア記事 2019.11.20

第4回マーケティング基本の「き」時代に合わないProductを見直そう

結婚式の進行は20年前とさほど進化なし 暗黙のルールもニーズに即して変える勇気を

結婚式の進行は ハードに比べて変化に乏しい

マーケティングのフレームワーク4P(Product・Price・Place・Promotion)のうち、Produc(t商品)はビジネスの根幹となるものですが、ブライダル業界は、もっとマーケットや顧客ニーズの変化を敏感に察知し、Productの見直しを図るべきではないかと思います。
ブライダルにおけるProduc(t商品)というと、チャペルやバンケットなど「ハード」、料理やドレスなど「ソフト」、ウェディングプランナーやサービスキャプテンなど「人」、結婚式準備「プランニング」及び当日の「進行」など、いくつかに大別できます。
そのうち、ハードは、年々磨かれてきていて、どの地域を見ても、大聖堂、白亜の城、スタイリッシュな会場など、一通りのバリエーションが出そろい、お客様にとっては選択肢が充実してきていると感じます。しかし、会場側の視点に立てば、多少、目新しいタイプのハードを建ててもひときわ目立つことは難しく、それだけでは勝負できない時代になっていると言えます。

一方、結婚式の進行に目を向けると20年、30年前と比べてさほど変わっていない、もっとニーズの変化に即した変化が必要なのではないかと思います。もちろん、ゲストに感謝を伝えおもてなしする、きちんと結婚の報告、お披露目をするなど、本質的な部分は受け継いでいくべきだと思いますが、時代やお客様の価値観の変化に合わせて、勇気を持って変えるべき部分もあると思います。

主賓は必ずしもスピーチに 耳を傾けてほしいと限らない

私自身、ポジティブドリームパーソンズ時代に「そこまで崩していいんだ」と開眼したエピソードがあります。

結婚式の進行に関する議論で、あるメンバーから「乾杯を主賓挨拶の前に組み込む」というアイデアが上がった時のこと。私は「乾杯後は、スピーチに集中する雰囲気ではなくなるので、大切なVIPに対して失礼に当たるのでは?」と意見しましたが、以下の反論を聞いて考えが変わりました。

1つは、主賓の緊張を緩和できるという点。

大半は、人前で話すことに慣れているわけではないため、かしこまって耳を傾けられるよりも、少し和んでいる方がリラックスして話してもらえるというわけです。もう1つは、料理をベストタイミングで提供しやすくなるという点。キッチンでは、主賓挨拶が終わる頃合いを見計らって、料理を提供する準備をしているため、前菜を冷蔵庫から出したり戻したりして、調整している。

主賓挨拶の前に乾杯を済ませていれば、そこに神経を使う必要がなくなって、スタッフは調理やサービスに集中できるようになり、お客様にも料理をベストな状態で召し上がっていただけます。主賓のパーソナリティーにもよりますが、ゲスト・新郎新婦・スタッフ、全員にとって有効なアイデアだと思い、“変える”勇気の必要性を実感しました。

ゲスト卓は新郎側、新婦側で分ける必要があるか?

披露宴の席次についても、暗黙のルールがありますが紐解いてみると、必ずしも守らなければならないわけではないものもあります。
側に分けるのが一般的ですが、このルーツは皇族の結婚式に遡り、ゲスト
を皇族と皇族以外に分けるという意味合いがあるとのことです。であれば、一般的な結婚式で踏襲しなければならない理由はなくなります。
ゲスト卓を新郎側と新婦側に分け、ランダムに配置することで、以下のようなメリットも出てきます。最大のメリットは、新郎側と新婦側の招待予定人数に一定の差がある場合、両家同士が気兼ねすることなく、招きたい人を招くことができるようになることです。ゲストをリストアップしてもらった時点で、新郎側50名、新婦側30名となった場合、バランスを取るために、新郎側も30名に絞るというケースは少なくありません。そうなってしまうのは、ゲスト卓を新郎側・新婦側でセパレートするからであって、そうしなければ、バランスを考える必要性は薄れます。結婚式当日を考えても、新郎側と新婦側のゲストの間に交流が生まれやすくなるというメリットもあると思います。どちらかが、招待人数を絞らなくて済むようになれば、会場側はゲスト数アップを見込めます。既に、変化や工夫が見られている好事例の1つがメイン席のバリエーションアップだと思います。従来の高砂席は、新郎新婦の素敵な姿をゲストに見てほしいという考え方から採用されたスタイルですが、「主役になりたくない」「せっかく足を運んでくれたゲストとコミュニケーションをとりたい」と言うニーズが増えている中、新郎新婦をゲストが囲むようなレイアウトや、新郎新婦が婚礼メニュー1皿につきゲスト卓つづ回るスタイルなど様々な試行錯誤が進んでいます。

良い結婚式の共有と枠の再設計

ブライダルのproductを磨くには、従来のスタイルを踏襲するだけでなく、1組1組のニーズに合わせたベストマッチな提案が不可欠であり、その役割を担うのがウェディングプランナーです。しかし、業務過多で1組1組について深く考える余裕がなかったり、伝統に捕らわれ過ぎて変える勇気が持てなかったりして、自由な提案ができずにいるケースが多いと感じます。こんな状況を打破するべく、マネジメントサイドに対して大きく2つを提案したいと思います。

1つ目は、良い結婚式の共有。ブライダル総研のGOODWEDDINGAWARDに倣って、社内や地域協議会でアワードを開催するケースは好事例の1つだと思います。良い結婚式を共有することで「ああいうアイデアもあるのか」「あのぐらい手を掛けなければダメだな」など、自分の経験の範囲だけでは得られないヒントを与えるこ
とができます。2つ目は、枠の再設計。閑散期は、1組3時間、1日1組限定など、余裕を持たせた設定にしておくことで、2時間のパーティーではできないようなチャレンジもできて、パーティーの幅が広が
り、プランナーのモチベーションも高まります。もちろん、大安・友引の土曜などは3回転させたいので、1組あたり2時間15分といった設定になるのはやむを得ないと思いますが、余裕のある枠を用意することで、PRにおいても「3時間ゆったり」「1日1軒貸切」といったキャッチフレーズが使えるようになり、自由度の高い結婚式を求めるカップルの心を掴むことができると思います。

情報化が進む昨今、結婚式当日のクオリティはSNSなどを通じてあっという間に広まってしまうため、集客にも大きく影響してきます。オーソドックスな結婚式で“赤点”を取らないだけでは通用しません。お客様の期待を上回るクオリティを追求すべき時代になっていると思います。

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