Columnコラム

メディア記事 2019.04.08

第1回マーケティング基本の「き」集客戦略の成功確率を高めるフレームワーク

ウエディング集客戦略は商品特性やターゲットとの整合性を 広告戦略だけを変えると成約率や単価が歪む

マネージャーやプランナーがポータルサイトの更新を行ったり、集客対策を練るなど、広告宣伝の専門知識を持たないままPR対 策を行うブライダル企業は少なくない。プランナーにフォーカスした結婚情報サイトwetukuを運営する高津守氏は、基礎知識が ないがゆえに失敗したり損をしたりしているケースが目立つという。グロービス経営大学院で経営学修士(MBA)を取得し、ポジ ティブドリームパーソンズでマーケティング&ブランディング室長を務めた知識と経験を踏まえて、ホテル・式場にアドバイスを送る。

STP×マーケティングの4P

ブライダル業界で「マーケティング」というと、真っ先に思い浮かぶのは、ゼクシィに何ページ出稿して、どんなコンテンツを載せるかといった広告戦略ではないでしょうか。しかし、それはマーケティングの一部でしかなく、そこだけで広告戦略を立てようとすると、集客・成約・単価のバランスが崩れたり、集客アップが成功するかどうか、常に賭けの状態に陥ってしまったりします。

例えば、うまくいっている競合会場のゼクシィ誌面を見て、キラー写真の構図やテイストを真似るというケースも多いですが、以下のようなリスクがあります。集客は増えても、成約率が著しくダウンしてしまうケース。ゼクシィ誌面のイメージと自会場の実態にズレが生じてしまっている、ターゲットと異なる客層の来館が増えてしまっていたりする可能性が考えられます。また、集客・成約共に伸びたが1組あたりの単価が激減してしまうケース。売上額が予算計画よりも大幅ダウンとなってしまい、経営難に陥るリスクもあると思います。

こうしたリスクを避け、広告出稿や様々なPR戦略が成功する確率を高めるためのツールがマーケティングのフレームワークです。

押さえるべきは、S(セグメンテーション)T(ターゲティング)P(ポジショニング)とマーケティングの4P(プロダクト・プライス・プレイス・プロモーション)です。

T(ターゲティング)の前に、まずS(セグメンテーション)を行います。エリア、男女、年齢、年収など、様々な視点で消費者を区分し、その中で、どの層に参入余地があるのかを判断するのがT(ターゲティング)です。この時、重要な判断基準になるのが、4Pのうちプライスやプロダクト。「数的にボリュームがありそう」「結婚式に費用をかけてくれそう」など、魅力的なターゲットに狙いを定めたいところですが、その前に自会場のテイストや取り扱っているアイテム、プランナーのスキルやキャラクター、価格設定などが、その層に響くかどうかを検証する必要があります。

競合会場にあえて 当てにいくのか、避けるのか

次にP(ポジショニング)。競合先を見据えながら、勝機がありそうなポジションを探します。ファーストステップは、縦軸×横軸のポジショニングマップをつくること。縦軸を会場のテイスト、横軸を価格など、縦軸の設定方法をあれこれ考えてみると、穴場のような思わぬポジジョンが見つかったりするものです。

競合のいないブルーオーシャンのポジションを確立できるに越したことはありませんが、どの地域も競合ひしめくブライダル業界において、簡単なことではありません。今までになかったウェディングスタイルを発明するなど「マーケットビルダー」になれれば、当然、競合もいませんが、至難の業です。

そのため、地域一番店と会場のテイストを寄せる一方で価格帯を下げてバッティングを避ける、あえてバッティングさせてシェアを奪うといった発想でポジショニングを決めるのが一般的です。

ここでも、4つのPのうちプロダクトやプライスを踏まえて判断することが重要です。新店オーフンの時には、勝機のありそうなポジショニングをベースに会場のデザインや価格設定を決めることも多いと思います。4つのPのうちプレイスは、どこで販売するか、清涼飲料水で言えば、自動販売機なのかコンビニなのかなど流通チャネルを指します。ホテル・式場の場合、リゾートウェディング以外、ほとんどのケースが会場での接客ですが、ブライダルフェアや新規接客枠の設定人員体制を含めるとチャネル戦略として考えておくべきポイントもあります。

ゼクシィ・サイト担当者も STPや4Pを意識せよ

こうしたマーケットのフレームワークについて、意識していなかったけどやっているという会場も多いと思いますが、問題は、(1)会場のオープン時にしか考えていない(2)ゼクシィ誌面やポータルサイトの担当者が把握していないことです。まず、(1)会場がオープンする時しか考えていない場合、オープンから3年、5年と経つうちに、当初のターゲティングやポジショニングが実態に合わなくなってきます。年月と共に消費者の思考は変わっていきますし、他社の新店がオープンするなど競合環境も変わるからです。そこでフレームワークを見直さず広告戦略だけを変えようとすると、ひずみが生じます。

例えば、ターゲットが、いつの間にか、当初設定した客層ではなく、今来店している客層に変わっていたりする。当初、1組あたりゲスト数80名を狙っていたのが、30名以下の少人数パーティーに変わると、組単価が下がるために経営難に陥ったり、会場の使い方に無駄が生じてしまったりします。ターゲティングを30名以下に変えるのであれば、会場のリニューアルを検討したり、新たなウェディングプランを設けるといった「プロダクト」の見直しや、そもそも競合との兼ね合いで勝機があるのか「ポジショニング」の検証も必要です。2ゼクシィ誌面やポータルサイトの担当者がターゲティングやポジショニング、それを踏まえてプロダクトやプライスが設定されていることを把握していないケース。

PRコンテンツの軸となるものを知らないので、トレンドや担当者自身の好みだけでキラー写真を選んだりキャッチフレーズを考えたりしてしまいがちです。当たればラッキーですが、失敗したらどこが悪かったのか、原因がはっきりしないので、勘で修正していくしかありません。常に賭けの状態になってしまうわけです。マーケットのフレームワークに沿って戦略を立てることで、こうした状態を避けることができます。広告・PR戦略の成功確率を高めるだけでなく、成功・失敗の原因も突き止めやすくなるため、軌道修正が必要な場合もスムーズになります。

WJ72号_第1回TIPLOG マーケティングの「基本のき」
send

私たちTIPLOGに関して、ご質問やご要望などございましたら、こちらからお気軽にご連絡ください。